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振付・ダンス総合コーディネートdignitive

「学校以外で出会う最初の大人」になりたい ーダンスの先生の独り言ー

  • 執筆者の写真: うぽる
    うぽる
  • 1月3日
  • 読了時間: 4分

「ダンスの先生」って、キッズの生徒さんにとっては、ちょっと特殊な存在なんじゃないかと思う。




もちろん親や家族ではなく、

かといって学校の先生でもなく、

毎日会うわけじゃないのに、それなりに深くコミットしてくる。

その子の人生で出会う「最初の大人」だったりするわけだ。








キッズの生徒さんを受け持つとき、親御さんにお願いしていることがふたつある。



ひとつは、「本人が」ダンスをやりたい気持ちを大切にすること。

「親がダンスをやらせたい(本人は乗る気じゃない)」という場合はお断りしているし、

「いざはじめてみたけど、やっぱりそんなに好きじゃなかった」という場合も、無理に続けなくて良い、と伝えている。

ダンスは人生を豊かにするけど、ダンスが踊れなくたって、生きるのに困ったりしない。





もうひとつは、「基本的にレッスンには、親は同行せず、生徒と先生だけでレッスンを行うことだ。


これはなかなかニュアンスが難しい。

「絶対に教室内に入ってくるな」ということではない。


それくらい厳しいレッスンをするとか、親に見せられないような指導をするとか、そんなことでももちろんない。


ご希望に応じて時々見学してもらうことも、全然ウェルカムである。

(それに、レッスンの動画は毎回お渡ししている。)







これらをお伝えしているのには、うぽるがレッスンをする上で、とても大事にしてることがあるから。


それは、

「子ども」というラベル越しにではなく、

一人の個人として尊重し、人対人として向き合うこと。





未就学~低学年くらいまでの子は特に顕著だが、

子どもというのは常に、親というフィルターを通して社会と接している


一人で直接他者と接することは基本的になくて、

例えば親戚の人が、ご近所の人が、子ども自身に直接話しかけるときでさえ、

親はその会話の言わば「通訳者」のようになる。

子ども自身が自分で理解できる内容でも、自分で話せる内容だったとしても。



それがいいとか悪いとかってことではなくて、それが、親御さんにとっても、子ども本人にとっても、当たり前になっている。








ダンスというのは、自分の身体と自分で向き合うことだ


他の誰かが……それが実の親であったとしても……子どもの身体や、子どもの踊りに、直接関与したり、コントロールすることはできない。

ダンスの先生ができることも、あくまでその営みを、サポートすることだけ。



自分で自分に向き合う。自分で自分の身体を知る。自分で動かす。

これがないと、踊りは成立しない。



そのことを確立するためにも、まず、「うぽる先生」と「自分(子ども自身)」という、直接の対話をできるようになる必要がある。

「親」というフィルターを挟まない。自分と他者を、直接相対させる体験が。




こんな小さい子にそんなことができるのかと、親御さんも思うだろうし、本人も当然、最初は不安そうな顔をする。

最初はもちろん、うまくできない。




でも、大丈夫。




「あなたを、ひとりの人として尊重するよ」
「あなたのペースや希望を受け止めながらレッスンを進めるよ」
「あなたはあなた自身で、自分の身体を意のままに動かすことができるんだよ」

ということを、言葉や行動の端々で、少しずつ、揺るぎなく伝えていく。

すると、そのうち少しずつ、そのことを理解してくれる。




やがて親というフィルターを、通訳を求めなくなったとき、「ひとりの個人」として自立する。

その成長が、たまらなく愛おしい。喜びがじわっと溢れる瞬間だ。





レッスン中スタジオ内に親御さんが居て、この「通訳役」を買って出てしまうと、なかなかこの状態にたどり着かない。

なので、冒頭のお願いをすることになる。

理解して預けてくださる親御さんたちには感謝、感謝だ。











便宜上、「子ども、子ども」と、この文章では繰り返し書いてきたが、

実際のところ、うぽは「子ども」という言葉が好きではない。



レッスンにおいて、子ども扱いすることはしないから。


もちろん、内容は工夫するし、伝え方も調整はする。身体能力やダンス経験のレベルにも合わせる。

でもそれは「子どもだから」ではなくて、大人の生徒さんにも等しくやっていることだ。

初心者の方と、プロを目指す人、同じ教え方をすることはないわけで、それと同じことをやっているだけ。





その子にとって「学校以外で出会う最初の大人」になりたい。


とは書いてみたものの、最初かどうかは、どうでもいい。

ダンスが初めての習い事とは限らないし、そうである必要もない。



でもきっとときに、

その子を「子ども」というラベルではなく、「一人の独立した人間」として尊重して扱った、最初の大人には、なるんだと思う。





そういう存在で、私はありたい。






この記事のライター

うぽる

振付・ダンス総合コーディネートサービス「Dignitive」代表。TRFのSAM氏、ETSU氏らに師事し、13歳でTRFバックダンサー、AAAのバックダンサーとして活動。その後歌手活動やラジオパーソナリティなどを経て、2013年から振付師・ダンス講師に。生徒に向き合う丁寧な指導と高品質な振付には定評がある。



 
 
 

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